尉鶲 其之弐

今季もピラカンサは良く繁り、多くの赤色の実と黄色の実をつけて、多くの野鳥たちに啄まれた。

特に初冬の頃には、拙宅では初めて鶫が二羽で飛来し、その身体が大きいこともあって、早くもピラカンサの実の半分ほどを食べ尽くしていた。いつものように尉鶲が現れ、四十雀、目白が現れ、ピラカンサを植えてから初めて小啄木鳥の姿も確認できた。留鳥である雉鳩や雀も、あいかわらず訪れてくれるので、寒い冬の間も拙宅の庭は賑やかであった。

正月の頃には既にピラカンサの実は食べ尽くされていたが、ピラカンサの大樹の根元に水盤を設置して水を張り、四十雀のために小粒ひまわりの種を木製の塀の平たい部分に置き、目白のために蜜柑を横半分に切ったものを椿の隠れた枝に刺し、雉鳩のために市販の鳩の餌、雀のために市販の小鳥の餌、試みに市販の野鳥の餌や粟の穂などをピラカンサに覆われた地面や、その周辺に撒いている。

尉鶲のためには、市販のミルワームを2パックほど購入して、拙宅で麩とキャベツの葉を与えて太らせたものを、小さな木製の容器に入れて、縁側に置いておいている。鳥類は高等生物であり学習能力がある。二月になった頃には、空の木製の容器が置いてあるだけでも、そこに留まるようになり、老母が木製の容器にミルワームを入れた瞬間に、それを咥えてゆくようになった。

本来、野生動物へ給餌をすることに私は反対の立場ではあるが、そもそも庭木であるピラカンサの実は野鳥に「食べられてしまう」ものである。また、遠州地方では有り余るほど流通する摘果した蜜柑は、老人が庭木の枝に刺して目白に食べさせることが、彼らの小さな楽しみとなっている。

観光振興のためなのか、自治体や事業者などが野鳥に対して大規模な餌やりを行うことがあるが、そのような行為は、本来の生態系を歪ませることになる。だが、個人が居宅の狭い庭に於いて小規模なバード・フィーディングをすることに、生態系を歪ませるほどの影響はないと私は考えている。住宅地でもバード・フィーディングを実践できる家庭は少ない。野鳥を庭へ呼ぶには、鳥類のみならず、生物や地学などに関する知識と知恵も必要である。

老母に生きる楽しみを与えるために始めたバード・フィーディングである。野鳥の訪れる庭のある家で、これからの人生の時間を過ごしていただければと考えている。