アナホリフクロウ

Burrowing Owl

Burrowing Owl

 名古屋市は人口200万人を超える大都会だ。
 名駅と栄という、ふたつの繁華街がある。名駅とは、名古屋駅の略で、その名の通り、東海道新幹線の名古屋駅で下車すれば、そのまま繁華街を娯しめる。栄には、市バスで行くことをおすすめする。乗車料金は均一制の大人200円、小児100円だ。街の景色も楽しめる。
 今回の私の小旅行は、娯楽目的のものではなかったのだが、やはり日常の風景から解放されるということは、精神的にも新鮮なものである。名古屋市には、行政上の管轄のこともあり、今までも、これからも、行くことになる。
 名駅に「ル・ウエスト(L’ouest)」というフランス語の名前のホテルがある。そのロビーに一羽のアナホリフクロウが飼育されている。アメリカ原産で、体長は20cmほどの、小さい雌のフクロウだ。可愛い顔をしている。実は、彼女は二代目であり、一代目の雄の「カン太」という男名前を引き継いでいる。金属製の四角い鳥籠は、道路に面したガラスの壁に即して配置されており、彼女は、外の様子を飽くこともなく眺めている。
 アナホリフクロウは昼に行動するという。夜遅くには、厚い布が鳥籠に掛けられる。早朝には、マウスやウズラが餌として与えられる。小さい嘴で餌をほじくると、細かい肉片が周囲に飛び散る。そんな理由で、鳥籠の側面や下半分などは、防護の壁で囲まれている。
 私は鳥が好きなので、写真撮影を許して貰った。フラッシュを焚かないように、コンパクトデジタルカメラを設定し、試しにロビーにあるバラやユリを撮影してみた。うまく行くことが判ると、鳥籠の鉄格子の隙間から、彼女が、こちらを向いてくれるのを待った。
 何枚か撮影して、その場で良いものだけを残した。こうした行為は初めてのことで、普段、私は写真などは撮らない。鳥を見ただけで満足してしまうし、その実存の感じが好きなのであって、自己に属する何らかの所有物にしようとする感じが、あまり好きではなかったからだ。ただ、最近は、老いた母親に、いろいろのものを見せたいという気分があり、その気持が、下手な写真を自分に撮らせているのだと思う。
 コンパクトデジタルカメラは、老母が老父から貰い受けたものだ。老父は建築の仕事をしていた。工事現場では、事前の有り様と仕上りとを撮影して、施主に見せる必要があった。老父は病気がひどくなって、その仕事も辞めてしまった。建築といい、土木といい、建設業の人はカメラが巧い。
 老母は、取扱説明書をろくに読みもせず、ピンボケの写真を撮っていた。私がアナホリフクロウの写真を見せると、感心したあげくに、自分の育てている花の写真を撮って欲しい、と私にせがんだ。それはマメ科の青い花で、その種子を人に分けるのに、説明のために付けたいのだと言う。
 私は、軽い講義をし、手本を示した後、老母にカメラを返した。

ビバーク!

 ビバーク。野営。野営地。緊急の露営(地点)。フランス語だが、英語圏でも同じスペルで使われている。ちなみにドイツ語では、Biwak と表記する。登山用語である。
 私(羊坂珠音)自身は登山家ではない。ウェブ上での緊急の露営地点として、このサイバースペースをお借りした。ビバークという言葉には、特別の感慨がある。それは昨年(2008年8月)のことだ。北海道の大雪山系、トムラウシ山で、ふたりの男性がビバークで遭難を免れている。
 トムさんとゆきおさんだ。
 詳細は、ゆきおさんのウェブサイトを御覧になっていただければ、と思う。私は、彼らの登山家としての能力を尊敬している。彼らに敬意を表し、また、彼らの精神力と行動力の、ほんの一片でもあやかることができれば、と願って、このブログのタイトルに「ビバーク」を使用させていただく次第である。
 トムさん。ゆきおさん。素晴らしい登山家ふたりに、あらためて感謝いたします。

 羊坂珠音