コハクチョウ 其之十

Bewick’s Swan

 今季もコハクチョウが鶴ヶ池へ飛来した。12月中旬のことである。
 だが、年末には、もう姿を消していた。

 念のために年明けの1月2日に再訪してみたが、やはりコハクチョウの姿はなかった。
 鶴ヶ池には、マガモ、コガモ、ヨシガモ、ハシビロガモなどがいて寂しくはなかったが、大勢いたアマチュアのカメラマンたちの訪れることもなく、池は静かだった。東の空には金星が三日月とともに光っている。
 私は自然観察実習として池の観察路を一周した。バード・ウォッチングにも練習は必要で、特に「小鳥」を見つけるのには技能が必要である。鳴き声から方向を判断し、肉眼で個体を確認した後、双眼鏡のピントを合わせて形態や色彩などの詳細を観察する。それからはじめて種の同定となるわけで、これら一連の動作をスムーズに行うことがバード・ウォッチングに於ける技能である。

 元日には、植物学の大先生から年賀状をいただいた。まさか年賀状をいただけるとは思わず、喪中欠礼を出さなかったことが原因であるが「高齢になりましたので新年のご挨拶は今年限りとさせていただきます」と文面にあるので、かえって先生の事情がわかって良かったとも言える。
 先生には寒中見舞いを出さなければならない。自然観察には、自然を観察するという楽しみとともに、自然観察を愛する人々との交流という楽しみもある。このようなご縁は大切にしたい。

 追記 写真は 2018.12 の観察の際に撮影したものです。

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喪中

 

喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます

 羊坂珠音

語学について 其之四

Aster

 インターネットを利用するようになって、外国語学習の重要性を痛感している。英語はできて当たり前だが、その他にもいくつかの外国語を修得しておけば、サイバー空間での可動性はグンと高まる。
 どの外国語を学ぶべきか。学問や芸術において重要な言語、政治経済において主要な言語、国境を接する隣国の言語などを優先して学びたいが、優れた教材が身近にあるかも選択の基準になるように思う。

 私の外国語の主要な教材は ETV の語学番組である。中国語、韓国語は一年間、ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語は半年間、ロシア語は三ヶ月間という放送期間だ。
 中国語と韓国語は、四月から翌年三月までの放送であるが、秋に前期の総復習がある。ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語では月毎に復習回がある。外国語は暗記する事項の多い教科で、反復学習が有効であるが、それは復習の頻度をできる限り多くすることで達成される。
 二年目、三年目ともなれば、以前に学習した内容も自然と脳裏に浮かび、定着していると感じられるのが嬉しい。 ETV の語学番組で扱う内容は、きわめて初歩的なものであり、毎年、一年生の授業を受けているようなものなのだが、なにごとにおいても基本というものは重要である。

 ポルトガル語の講座を ETV で放送していただけないだろうか。私の住む地域は、警察署でも総合病院でもポルトガル語の案内が掲示されているようなところで、ちょっとした Lusofonia である。
 書籍や CD の教材が手元にはあるが、ETV で映像による教材を提供していただければ、より勉強しやすくなる。ロシア語と同等の三ヶ月間でも放送していただければ有難い。テレビは、家庭で勉強する習慣を形成するのに最適なメディアだ。NHK にはポルトガル語のテレビ講座の検討をお願いしたい。

 今季は老父の死去があり、録画をためこんでいたが、順調に消化しつつある。
 外国語の学習には、日常を離れられる嬉しさがある。試験のない気楽な学習で、趣味のようなものだが、稀に外国の方と遭遇することがあり、小さな会話などできると楽しくなる。

ラグビー観戦記 2018.10.06 ヤマハスタジアム

Yamaha Stadium

 快晴のラグビー日和である。午前中に家事を片付け、正午過ぎにヤマハスタジアムへ向かった。歩いて気持ちの良い青空である。

 2018 – 2019 ジャパンラグビー トップリーグ 第5節。ヤマハ発動機ジュビロ vs 東芝ブレイブルーパス。17:00 キックオフ。レフリーはグレン・ジャクソンさん。

 前半。東芝ブレイブルーパスに先制を許したものの、ヤマハ発動機ジュビロは敵陣でゲームを進めることができている。フォワードが機能して同点、クワッガ・スミス選手が前進し、ゲリー・ラブスカフニ選手がトライして逆転、五郎丸歩選手のペナルティ・ゴールで加点し、前半終了時のスコアは、ヤマハ発動機ジュビロ 15-7 東芝ブレイブルーパス。

 後半。東芝ブレイブルーパスはバックスが良い。パスの連携が綺麗で見応えがあったが、ヤマハ発動機ジュビロもまた、相手をとらえて見事な守備を見せた。ヤマハ発動機ジュビロはキックでエリアをとり、フォワードがスクラムで押し込むという理想的な展開で加点する。更に敵陣でゲームを進め、矢富勇毅選手の前進から吉沢文洋選手がトライ。最終スコアは、ヤマハ発動機ジュビロ 27-7 東芝ブレイブルーパス。

 選手の負傷には心が痛むが、ラグビーのゲーム自体は、物理学や数学を考える教材ともなり、楽しいものだ。放物線と二次関数など、ラグビーに例えると解り易いものも多い。速度、時間、距離の関係。古典力学に於ける運動の法則など、ラグビーを教材とした教育の可能性は広いのではないか。

 ラグビーの面白さは相手をかわすことにある。相手の守備陣をくぐり抜けてステップを踏む様子は、スペクタクルとして鑑賞しやすく、爽快である。タックルで相手の進撃をとめることは、相手に自分の身体をぶつけることではない。バインドして相手の動きを封じ、ボールを奪取することが目的だ。危険なプレーは醜悪でしかない。美しいラグビーを観たい。

 エコパスタジアムや遠州灘海浜公園球技場まで出かける余裕はないが、徒歩圏内にあるヤマハスタジアムであれば短時間で帰って来られる。老母に心配や不安を感じさせることもなさそうだ。

ラグビー観戦記 2018.09.15 ヤマハスタジアム

Yamaha Stadium

 人類とは、フットボールをする猿である。

 2018 – 2019 ジャパンラグビー トップリーグ 第3節。ヤマハ発動機ジュビロ vs ホンダヒート。17:00 キックオフ。レフリーは加藤真也さん。今季ホーム初戦である。

 小雨のパラつく天候で、夜には本格的な降雨の予想もあった。家に居るつもりでいたが、行かないと後悔するような気もして出かけた。老親の介護や、葬儀のことなどで、ラグビーを観戦する余裕がない。精神的にも楽しめる自信がないように感じていたが、相続登記の完了で一息ついたようにも思えた。チームや選手を応援することで、自分にも跳ね返ってくるものがあることを期待した。

 前半は、ヤマハ発動機ジュビロによる敵陣でのプレーが続いたが、最初に押し込んだ後は、均衡が続いた。ゲリー・ラブスカフニ選手とエイダン・トウア選手の鮮やかなステップが見所で、前半終了時のスコアはヤマハ発動機ジュビロ 12 -10 ホンダヒート。
 
 後半は、ヤマハ発動機ジュビロのラインアウトやスクラムが良く、清原祥選手やヴィリアミ・タヒトゥア選手らの捩じ込むようなトライで加点した。コンヴァージョンの決まらなかったことが残念だが、夜間の降雨による視界不良もあるのかも知れない。ホンダヒートはベイデン・カー選手のペナルティー・ゴールで加点したが、シンビンの枚数も多く、試合の主導権を握れない様子であった。最終スコアはヤマハ発動機ジュビロ 34 -16 ホンダヒート。

 産業化したスポーツを観戦することが、最近では辛くなってきている。その理由は、酷使された選手が怪我をすること、外科手術の施されること、その選手を早期に復帰させようとすることなどに、心の痛みを感じるからである。経済的な理由のために選手の身体が犠牲になるのを見ていられない。

 暗い夜の中を帰宅すると、老母が家の前で傘をさして待っていた。「暗くなったので」と老母は言ったが、私の不在による寂しさもあったのかと思う。そんな事情もあり、今後はスポーツ観戦から、しばらく遠ざかることになるかも知れない。

スズムシ 其之十三

suzumushi female

 スズムシの成虫になる時期は、雄が早く、雌が遅い。七月の下旬頃には雄ばかりであったものが、八月の下旬になると雌ばかりが成虫になる。
 孵化したての初齢幼虫の段階では性徴が見えず、雌雄の判別が不可能であるので、卵のうちから性別が決まっているのか、孵化の時期で性別が決まるのか、あるいは初齢幼虫から終齢幼虫に至る間に性別が決まるのか、個体群密度や温度、照度などの生育条件によって性別が決まるのか、判然としない。
 時間があれば調べてみたいものだが、現時点で可能な作業は文献研究にとどまる。自宅では比較観察できるほどの空間も時間もない。

 老母は炊事をしなくなり、私が食事の準備や後片付けをしている間を、読書やテレビ鑑賞で過ごしている。自分の食べたいものもあるだろうからと、夕食は老母の選択に任せているのだが、簡単な料理すらしていないこともある。セブンイレブンの惣菜の容器が洗い場に置いてある。
 私は、料理の勉強に励んでいる。最近になって、漸く自分なりの料理の理論が見え始めてきた。栄養学、食品学、調理学の三分野に知識を整理し、食品学では食材の選び方を、調理学では切り方や煮方、焼き方などを学んでいる。技能は経験を積むことでしか身に付かない。特に夏季は青果の傷みが早いので、食材の購入や保存について考える良い機会になった。
 安全と衛生は調理の前提である。刃物を使い、熱源を使うので、切傷や火傷を負わないように注意
することが重要課題である。幸い私はまだ怪我をしたことはないが、ひやりとした経験がないわけでもない。油が撥ねて目に飛び込んできたときは本当に驚いた。火事を出さないように、コンロを使っている間は、キッチンから離れない。
 酸性とアルカリ性の粉末や溶液を用意し、中性洗剤とともに使っている。酸性はクエン酸、アルカリ性は重曹、セスキ、酸素系漂白剤などだ。キッチンは清潔を心がけ、シンクには水を残さないようにしている。食品を扱う際、衛生に注意すべきことは、飲食業も家事もかわりない。

 スズムシを飼育した経験が、料理の修得にも通じている。安全と衛生に留意し、食事の質や量、時間などについて、観察しながら対応する。思いやりの心さえあれば、なんとかできるようになるものだ。

スズムシ 其之十二

suzumushi

 今年のスズムシも成虫になった。

 孵化が始まったのは五月上旬である。今年は気温にも恵まれた。双眼実体顕微鏡での孵化場の清掃作業もこまめに行い、カビに犯される卵も少なく抑えることができた。生物を飼育する際、まず考慮すべきは、その環境の衛生状態を良好に保つことである。

 老父が亡くなり、私は喪主を務めた。
 自宅での看取りである。呼吸がなくなる。脈拍がなくなる。体温は測れるが、血圧は測定不能になる。心臓マッサージを施す。瞳孔が開いたままになる。
 往診をお願いしていた医師に来てもらい、死亡を確認していただいた。葬儀社をさがして一切を依頼し、遺体は自宅に安置した。ドライアイスで冷却し、出棺までのときを待った。
 葬儀は恙無く終了した。

 スズムシは夜を通して鳴いている。