散策 其之三

日曜日は晴天になると聞いていたので、前日から外出しようと考えていた。行き先は太田川の河口で、目的はシギやチドリの観察である。旅鳥は春と秋に日本を訪れる。太田川の河口には絶好の干潟がある。フィールドスコープを準備して、彼らの飛来を確認するべく、自動車を走らせた。

事前に新聞で潮位を確認すると、満潮に近い時刻ではあったが、歩くだけでも運動不足の解消になると考えた。しかし、いざ外を歩いてみると、気温が高すぎる。満潮の干潟にはアオサギやカワウ、ミサゴといった野鳥の姿が見えるが、その数も少なく、川上へと歩く途中で、飛翔するシギの姿を見ることができたことが唯一である。あまり暑すぎると野鳥も姿を見せないのだ。

トンボの群れの飛来を間近で見ることができた。キリギリスの声を聴き、バッタを追ってもみた。そのうち道路下の日陰が見えたので中へと歩を進めてみると、なんとも涼しい風を感じる。日向でも海風は吹いているのだが、あまりの高温に涼しさを感じないのかも知れない。コンクリートの壁にもたれてしばらく休んだ。

自動車で対岸へ移動し、野鳥観察小屋の下の日陰を目指した。河川工事中で立入禁止の箇所が多く、水辺に近づくことも難しい。野鳥観察小屋の下の日陰には大きな木製のテーブルがある。あらく太い木を組んだだけの簡素なテーブルで、中央に大きな焦げがある。そのテーブルの上に腰を下ろすと、ようやく本格的に海風を感じることができた。河川工事中の土砂の堆積により、景色は見るべくもないが、なんとか気持の安楽を得る。九月からの学習計画などを考える。

私の現在の専門は法学とその周辺にあるが、自宅で市販教材を使って学習している。社会人に成り立ての頃は通学したり、近年でもウェブ講座を受講したりもしたが、現在は書店に行って基本書や参考書、問題集などを購入し、自宅でそれをこなすというスタイルに落ち着いている。学習の主導権を他者に渡したくない。教材の選択などは、自分で細かく決定できる方が、社会人には向いているように思う。

老母の面倒を見ながら、家事をしなければならないこともあり、通学することや、自習室などで勉強することは、いまや不可能な状態にある。家事で勉強の時間を削られることは厳しいが、社会人の勉強とはそのようなものだ。そもそも法学部を卒業しているわけでもない。実務経験はあるが、基礎的な学力に欠けていることには自覚がある。九月からは、基礎的な学習に時間をかけて取り組みたいと考えている。

今日は気温が高すぎた。海風の感じられたことを幸として帰路に着いた。