散策

Kōyabōki

 陽光に恵まれた日曜日、そろそろ冬鳥の到来する頃であろうと思い、バード・ウオッチングの支度をして外出した
 いつも行く場所は決まっていて、拙宅から数キロの自然環境保全地域である。野鳥だけでなく、その他の動物や植物など、幅広く観察することが私の方針で、名前のわからないものがあれば、コンパクトデジタルカメラで画像を記録し、帰宅後にウェブで調べたりする。自分のフィールドを持ち、何年でも歩いて観察するスタイルで、鳥類にこだわることなく、広く生態系や地学的な状況について、知見を重ねてゆこうと考えている。

 最近は、あるNPO法人に所属し、地域のこどもたちと一緒に自然観察を楽しんだりもしている。自然にはリスクもあるので、まずは安全や衛生に配慮しながら、自然観察、さらには理科の学習へと進めてゆく。こどもたちの自然観察や理科の学習を支援するためには、私自身がこどもたちの質問に答えられるようにしておかなければならない。そんなこともあって、事前にフィールドを観察している。
 照葉樹に落葉広葉樹の混じる森林で、スダジイ、ツブラジイ、アラカシなどの繁る辺りを歩いていると、小鳥たちのにぎやかな声が聞こえる。双眼鏡で確認してみると、個体数の多いメジロのほかに、エナガやコガラの姿が確認できた。声だけではあるが、シジュウカラ、ヒヨドリなどもいるようだ。

 観察路は沼を一周するように作られていて、その沼には冬になるとカモ類が飛来するのであるが、今日はまだ数が少ないようである。カルガモと思われる数羽を水面に確認できるだけで、持参したフィールド・スコープのカバーを開くことはなかった。
 沼の水はどんよりと濁っていて、少し前にはヨシやマコモで占められていた領域にもセイタカアワダチソウが進出している。地下水脈からの湧水量が少ないのではないかと懸念しているが、これはより大きな水系全体の問題である。上流での開発行為がもたらす帰結として下流域が渇水する。工業地域で鑿泉して地下水を汲み上げれば、当然その下流域の湧水量は減少する。私たちにはどうすることもできない。
 それでもまだ自然と呼べるものが残っているうちは、私にも散策という楽しみが残されているように思う。これからもこの地を歩み続けたい。