ラグビー観戦記 2014.05.24 大久保グラウンド

Okubo Ground

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 晴天に恵まれて大久保グラウンドへ向かう。その道の輝きもまた、ラグビー観戦の経験に含まれるのだと思う。眩しい光がアスファルトから照り返している。
 2014 春季練習試合 第2戦。ヤマハ発動機ジュビロ vs 日野自動車レッドドルフィンズ。13:00 キックオフ。
 配布されたメンバー表とは異なり、曽我部佳憲選手の姿がスタンドオフにあった。キッカーとしての役割は、やはり彼が担うしかないのであろうか。プレース・キックはもとより、ペナルティー・キックでのゲインなど、キッカーの能力が試合へ及ぼす効果は大きい。
 前半開始早々に藤井達也選手のトライがあり、ゲームとしては勝ち試合を予想させた。曽我部佳憲選手からウヴェ・ヘル選手へのキックパスも成功している。フォワードも強さを発揮しており、スクラムで押し込むことができている。敵陣でのスクラムから展開して伊東力選手がトライした。前半のスコアはヤマハ発動機ジュビロ 17-0 日野自動車レッドドルフィンズ。
 ハーフタイム。空にはツバメが飛び交っている。
 後半開始後も敵陣へと攻め込んだが、自陣へと戻される。しばらくは自陣で耐える場面が続いた。レッドドルフィンズに勢いがあり、ラインアウトからのモールを押し返すことができず、トライを献上した。だが、その後ヤマハ発動機ジュビロが失点することはなかった。
 伊東力選手が相手をかわすステップを踏んでトライ。工藤良麻選手が長い距離を走り切ってトライ。インゴール前での曽我部佳憲選手の短いキックパスを工藤良麻選手が押さえてトライ。後半の殆どの時間帯を支配して、得点を重ねてゆく。
 敵陣の22メーターラインを越えたら、得点して帰りたいものである。相手キックをチャージするなど、好いプレーが続いた。最後のトライは、相手スクラムからフォワードがボールを奪取し、サイドからインゴールへと走り込んだものである。最終スコアはヤマハ発動機ジュビロ 43-5 日野自動車レッドドルフィンズ。
 結果としてトライに結びつかなかったプレーにも、クロスでの突破やキャッチからの攻め上がりなど見応えのあるプレーがあった。ランで突破した選手をサポートする、短いパスをまわすハンドリングの技術がほしい。
 大久保グラウンドでは観客席とフィールドとの距離が近いので迫力がある。監督や選手たちの声も聞こえ、ラグビーそのものが活き活きと感じられた。

ラグビー観戦記 2014.05.17 大久保グラウンド

Okubo Ground

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 気持の好い晴天で、気温もほどよく、ラグビー観戦には絶好の一日となった。ただ、フィールドでプレーする選手には暑かったかも知れない。
 2014 春季練習試合 第1戦。ヤマハ発動機ジュビロ vs 中部電力。14:00 キックオフ。
 大久保グラウンドに入場するとき、メリケントキンソウ(キク科)の種子をグラウンドに持ち込まないように、靴底をぬぐいながら、先発メンバーの顔写真を拝見する。ウヴェ・ヘル選手、ハヴィリ・ロッキー選手という新戦力の名前が見えた。
 ウヴェ・ヘル選手はロックを務めていたが、曽我部佳憲選手からの長いキックパスを良くキャッチして、トライまでつなげたことが印象的であった。ハヴィリ・ロッキー選手のパワーも素晴らしく、相手を押しのけてインゴールまで走りこむ強さがある。
 フォワードが機能している。スクラムを押し込めるので、バックスも活きる。ラインアウトからの展開もうまい。セットプレーを確実に決めることは、勝利をつかむための重要なステップだ。
 中部電力も良いチームであったが、前半のスコアはヤマハ発動機ジュビロ 29-0 中部電力。インゴール直前での厳しいディフェンスに良く耐えて完封した。試合に勝利するためには失点しないことである。
 後半開始早々、中部電力に失点を許したが、その後はヤマハ発動機ジュビロのゲームであった。直ぐに徐吉嶺選手の鋭いランにより挽回する。さらにフォワードによるラインアウトからのモールでのトライにより加点する。
 藤井達也選手のキャッチとランによるトライは印象的であった。ボールを確実につかみ、相手を避けて、空いたスペースを走りきる。ボールをドリブルしなければならないサッカーとは違う、ラグビーならではの疾走感だ。徐吉嶺選手のランで、またトライを重ねる。「ブンちゃん」という掛け声が観客席から響いた。
 後半も半ばを過ぎると、敵陣にスペースの空くケースが多くなった。そのまま走りきれば得点というわけで、トライが量産された。最終スコアはヤマハ発動機ジュビロ 67-5 中部電力。
 外出して日光を浴び、大空を見上げ、選手たちの溌剌としたプレーを観ることが目的である。好いプレーが多ければ、結果として試合に勝利する。試合に勝利することにより、観客も増えることと思う。そんな好循環を期待しながら帰路に着いた。

「いろは歌」試論

Asian Swallowtail

Asian Swallowtail

「いろは歌」は和歌である。和歌とは通常、万葉集にみられる長歌や短歌などを指すが、ここでは神楽歌や催馬楽などの古代歌謡も視野に入れて考えることにする。
 古代歌謡の形式のひとつに「今様」というものがあり、佐佐木信綱校訂「梁塵秘抄」岩波文庫1933 などにより、現代の読者も目にすることができる。古今和歌集「おなじもじなき歌」のような趣向を、今様の形式で行なうものが「いろは歌」であると私は考えている。

「いろは歌」は言語遊戯かと問われれば、それはあらゆる文学が言語遊戯であるという意味で、言語遊戯であると答えざるを得ないであろう。あえて言うなら、パズル性を持つ文学ということになるだろうか。日本語によるパズルでありながら、作品としての文学性・芸術性を高めることを、ひとつの目標としている。この点で「いろは歌」は、パズラーなどのミステリーに近いもののように私には思える。
 例えば「アナグラム」という五文字の言葉からは(文意を問わないのであれば)5の階乗である 120通りのアナグラム( anagram )を作成することができる。これら 120個のテキストの中から、意味の通るもの、美しいものを探し出すことが、魅力的なアナグラムを制作する際の課題となる。
 言語遊戯の世界では「意味の通らないもの」を面白がることもあるようだ。しかし文法が破格のものなどは読みづらい。多くの読者には「意味の通らないもの」の面白さは理解しづらいのではないかと思う。

「アルファベットのすべての文字」に対して行なうアナグラムがパングラム( pangram )である。この場合「アルファベットのすべての文字」数の階乗の数だけテキストが存在する[*]ので、そこから意味の通るもの、美しいものを探し出すことができれば、魅力的なパングラムを作成することが可能になる。
 パングラムでは、その前提となる「アルファベットのすべての文字」を、いかに定義するかが重要になる。「いろは歌」は日本語によるパングラムと考えることもできるが、日本語の仮名の文字数が今様の音数にほぼ等しいということには大きな意義がある。

「いろはにほへと ちりぬるを」の「いろは歌」は、平安時代の日本語によるものであり、四十七文字を「すべての文字」として定義している。今様は七五七五七五七五の計四十八音であるから、字足らずの句をひとつ作ることにより、四十七文字で「いろは歌」を制作することができる。
 このとき、中世以降(たぶん漢語を読むために)よく使われるようになった、撥音を表記する文字「ん」は、まだ認識されていない。江戸時代に国学者などの制作した「いろは歌」も、古典言語としての日本語をふまえており、四十七文字で制作されている。
 なお、江戸時代には町人たちにも文芸が盛んになり、多くの文献が残されているが、仮名遣いについては規範がないようである。明治時代、契沖仮名遣いが歴史的仮名遣いとして規範化されるようになると、庶民たちも歴史的仮名遣いを学び、使いこなすようになる。
 黒岩涙香の「萬朝報」で募集された新しいいろは歌では、撥音を表記する文字「ん」が含まれて「アルファベットのすべての文字」が四十八文字と再定義されることにより、今様の形式を整えることが容易になった。この定義は昭和時代の週刊誌などでも継承されることとなる。
「短歌研究」2013年11月号の千葉聡氏による「口語いろは歌」では、現代仮名遣いにはない(したがって現代語の語彙も少ない)「ゐ・ゑ」の二文字を除き、代わりに促音の小書き文字「っ」と長音符(約物)「ー」が追加されている。これらは1モーラを形成するため、今様の形式を保つことができる。ただ、この場合でも拗音(「きゃ」など)を表記する際には1モーラに二文字が必要となるため「拗音はなるべく使わない。やむを得ず使う場合には、そのぶん長音を設け合計四十八音になるようにする」(同誌 P55)と規定されている。

「いろは歌」を定型詩や韻文に限定せず、自由詩や散文でも良いとするのであるなら、現代仮名遣いの四十六文字を定義するだけでも良いことになる。現代仮名遣いの登場以降、そのような試みはなされているはずであるが、その場合は今様の形式を離れることとなるので「いろは歌」の呼称が適切であるかが問題となる。

[*]
英語  26!= 403291461126605635584000000(20桁)
日本語 46!= 5502622159812088949850305428800254892961651752960000000000(58桁)
日本語 47!= 258623241511168180642964355153611979969197632389120000000000(60桁)
日本語 48!= 12413915592536072670862289047373375038521486354677760000000000(62桁)

ちなみに、現代日本語による俳句と短歌においては以下の数のテキストが存在する。
俳句 107^17= 31588152109649857868144549324788907(35桁)
短歌 107^31= 814511289564837125111349801264249382037844335107777833858664643(63桁)
仮名46音(46文字) + 濁音20音 + 半濁音05音 + 拗音36音 = 107音とした場合の重複順列を計算した。
なお、拗音は現代仮名遣いで標準的な開拗音((きぎしじちぢにひびぴみり)×(ゃゅょ))を定義した。