春愁 其之ニ

Canada toadflax

 浜岡原子力発電所の事故に対応する広域避難計画が発表になったあと、福島第一原子力発電所の事故に対応する避難指示解除後の帰還の困難を知り、避難計画というものは帰還までを展望したものでなければならないと深く感じている。

 そもそも静岡県の温暖な気候しか知らない住民に、自家用車で岐阜県や金沢市まで避難しろというのが無理な話で、私などは雪道の運転の経験をしたこともなく、もちろん岐阜県や金沢市までの道順すら知らない。老親ふたりと近隣の高齢者を連れての道行となるはずで、それだけでも無理だという気がしている。
 金沢市まで自家用車で旅行した経験のある静岡県民、特に遠州の住民は、どのくらいいるのであろうか。NHKからは「北陸東海」という括りで扱われることが多いが、北陸地方の話題が静岡県でローカル番組として放映されることには違和感がある。北陸地方は、むしろ近畿圏との交流が深いのではないか。北陸地方と東海地方では気候も文化も異なる。未知の土地である岐阜県や金沢市に避難するよりも、友人知人の多い首都圏に避難したいのが正直な気持だ。

 避難指示解除後の帰還の困難を考えると更に憂鬱な気持になる。福島県の復興の様子を見ていると、はじめに自治体ありきの発想で、住民の意思を尊重しているとは思えない。行政がつねに正しい行動をとるとは限らない。彼らもまた誤りを犯すが、その誤りの責任を追及することは、証拠を押さえにくいこともあり、個人や法人の責任を追及することよりも遥かに難しい。
 被災地に於ける経済的な再建が困難であるなら、原発事故のリスクのない土地での「やりなおし」も視野に入れて考えなければならないだろう。すでに避難の段階で、将来のことを考え、広域避難計画区域以外の場所へ移動する住民もいるのではないか。やりなおすなら早い方が良いと思うが、私のように介護すべき家族を抱える者には、身動きもとりづらい。政府や事業者による保障が充分に行われるのかも不安である。

 浜岡原子力発電所の周辺自治体に住む者として、原発事故のリスクを負うことは覚悟している。避難や帰還も現実的な課題である。認知症の老父も、その世話をする老母も、やがては人生の終焉を迎える。認知症には在宅介護が望ましいのであるが、北陸の寒冷な気候のもと、集合住宅での介護も避けられないのかも知れない。せめて最期の時間くらい幸福に過ごさせてやりたいものである。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中