カブトムシ 其之三

Japanese rhinoceros beetle

Japanese rhinoceros beetle

 今年は十七頭のカブトムシが羽化した。いずれも角の形の良い立派な雄である。繁殖のために二頭を残し、十五頭を森へ返すことにした。昨年の冬、三齢幼虫の段階で、すでに五十頭を森へ返している。
 午前二時半に起床し、森へ向かった。ヘッドライトを頼りに、まだ暗い道を歩く。クヌギのある場所まで来て、樹液の溢れている箇所を窺った。あまり昆虫の姿が見えない。
 十五頭の雄のカブトムシは、クヌギの葉を緩衝材に入れた移動用の小さな飼育ケースの中で、静かに折り重なっている。それは不思議な静けさで、暴れるのではないかという私の予想を裏切るものであった。

 羽化してしばらくは、十七頭を大きな飼育ケースの中でまとめて飼育していた。食事となるゼリーを全頭数分ならべ、なるべく闘争することのないようにと気を配っていたが、はじめは各々ゼリーを抱えこんで食べていたはずなのに、いつのまにか闘争が始まっている。
 頭部にある長い角を、相手の胴の下へ潜りこませ、相手をひっくり返すという、カブトムシに特有の闘争である。胸部にある角との間で相手を挟んで持ち上げたりもする。相手を殺すことはないが、鞘翅に角で刺された痕の残ることがある。
 七月の初頭には全てが羽化していて、早く森へ戻したいと考えていたが、天候が優れず、先延ばしになっていた。繁殖のために早期に二頭を分離し、森から捕獲した雌五頭と飼育しており、その後の十五頭を大きな飼育ケースの中で飼育して、どうなるかという興味もあった。
 羽化して数日は、土の中に潜っていることが多く静かであったが、次第に元気になり、飼育ケースの中に閉じ込めておくことが可哀想になった。翅の音がすると、その思いは余計に強まった。はじめから森へ返すつもりでいたので、七月の半ばに出かけることにした。

 クヌギの木の幹の、なるべく高いところに雄のカブトムシをとまらせてゆく。移動用の小さな飼育ケースから、いっせいに飛び出すということもなく、神妙な様子である。私のシャツの袖にしがみついているものもいる。そのままにして作業を進めた。
 なるべく多くのクヌギの木に分散させるようにして、カブトムシを放した。すべてを放し終えた後、もう一度見回り、下の方へ降りてきてしまったカブトムシを上の方へ戻した。
 帰宅したのは午前四時半である。それまで十五頭を飼育していた大きなケースへ、家に残した雄二頭と、繁殖のために捕獲した雌五頭とを移した。自然観察の一環として、昆虫の発生を具体的に観察することが、カブトムシを飼育することの目的である。すでに新しい卵をひとつ発見している。

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