ノコギリクワガタ

Nokogiri Kuwagata

Nokogiri Kuwagata

 少年よ、クヌギの樹を覚えたまえ。
 そして、まだ明るいうちに、クヌギの樹の、樹液の染み出ている箇所を探しておくことだ。その場所は、チョウやハチなどが教えてくれるかも知れない。そして、翌朝の起床に備えて、その夜は早く就寝することだ。なぜなら、翌朝は午前二時半には起床しなければならないからだ。
 クヌギの樹を見分けることさえできれば、カブトムシは容易に捕獲することができる。カブトムシは深夜の樹液酒場で最強の昆虫であるからだ。午前三時頃には、なにものにも邪魔されることなく、悠々と樹液を楽しんでいる。彼らの中から容姿の良いものを選んでくるだけのことだ。
 深夜の昆虫観察は興味深い。ゆっくりと樹の幹を這い降りてくるナナフシ、触角の長いマダラカマドウマ、ヤブキリを捕食するトビズムカデ、これら大型の節足動物は捕獲せず、そのときに良く観察しておくことをお薦めする。
 そして、昼間のうちにマークしておいたクヌギの樹へゆく。そのとき、きみは昆虫たちの支持を集める深夜の樹液酒場について、更に詳しく知ることになるだろう。クヌギのみではなく、アラカシなどの広葉樹の樹液にも、昆虫たちは集まっている。
 きみのライトに反応して、光る目を持つ昆虫たちの集っている樹木があるだろう。その樹木には多分、ボクトウガの幼虫の穿孔した維管束を、大きな顎を持つ他の昆虫たちが拡げた「樹木の傷」がある。そこから染み出る樹液は、真夏の暑い空気のなかで醗酵し、甘く、酔わせる液体と化している。そこが樹液酒場だ。
 涼しい時間帯になると、そこにカブトムシたち、夜の昆虫が集まってくる。樹液酒場では、体格の大きく、力のあるカブトムシが最強だ。クワガタ類は、すでに蹴散らされている可能性の方が高い。
 それでもコクワガタなどは、見つけやすいほうだ。捕獲も飼育も比較的やさしい。ヒラタクワガタを見つけられれば幸運だ。彼らを樹の中から引きずり出すために、金属製の道具を使う必要があるかも知れない。
 ノコギリクワガタのペアを見つけることができたので、捕獲してみた。人工的に養殖したものほどの立派な顎ではないかも知れないが、まあ、自然の昆虫というのはこういうものだ。
 とにかく、午前二時半に起床することが、とりあえず、きみの課題だ。その時間、睡眠中の家族もいるだろうから、決して起こさないように。前夜のうちに、昆虫採集に必要なものをバッグに準備しておくと良いだろう。
 少年よ、きみの幸運を祈る。

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