シュロ

Chusan Palm

 一月一日の午後は、見付三社を歩いた。これは自分の趣味のようなもので、家事ではない。だが、私の家は神道でお祭りをするので、そんなことも影響しているのかも知れない。
 趣味と書いたのは、私は自然観察が好きだからだ。神社には大抵、心地よい自然が残っている。よく鎮守の森というが、神社の境内にある巨樹巨木や、様々な植栽、飼育されている動物なども楽しい。自然と共存するという感じが好い。
 見付三社とは、矢奈比賣神社(見付天神)、淡海國玉神社(遠江國総社)、天御子神社の三社をいう。
 見付三社の中で、最も有名なのは、矢奈比賣神社(見付天神)であろう。合祀されている菅原道真公の方が高名で、学業成就や受験合格の祈願をする人々が、遠方からも多く訪れる。この神社は、国の重要無形民俗文化財である見付天神裸祭で有名かも知れない。見付天神の境内には、伊勢神宮の遥拝殿もある。
 淡海國玉神社(遠江國総社)は、遠江國の神々をあわせた総社という偉い地位にある神社だが、境内に広い原っぱを持つ、子供に優しい神社だ。東海道見付宿の、ほぼ中央にあり、見付の人たちからは「中の宮」と呼ばれて親しまれている。
 天御子神社は、見付宿の本通りからは、少し離れた場所にある。境松という、まさに見付の地の境界にある神社だ。小さな神社であるが、裏に、ヤマモモの巨木がある。
 見付天神へは、元門(もとかど)から向かう。ここは東海道から見付天神に通じる小道への入口であり、江戸時代の表参道である。現代では、住宅の狭間にあり、見落としてしまいそうな場所である。見付天神裸祭では「元門車」を称する、現在の富士見町に所在する。歩いて行くのであるから、あえて細い道を行くのも楽しみのひとつである。
 その細い道の片側は雑木林になっており、竹や笹、棕櫚(シュロ)なども生えている。シュロは、この辺りに良く見られる植物で、なじみの深いものである。人の手で植えられたものかも知れないが、生き延びているのであるから、大切にしてあげなくてはならない。私は植物が好きだ。
 大義名分を言えば、こういうことになる。この地球上では、植物のみが独立栄養生物であり、動物や菌類は従属栄養生物であることを、私たちは高校の生物で学習した。つまり、植物というものが存在しなければ、私たち動物は、生きてゆけないのである。特に、私たち人類は、地球の環境に関して、過去に多くの無残な仕打ちをしてきたことに、最近、気がついた。それを自覚した現在以降は、地球上のあらゆる植物に対して謙虚でなければならない。
 午後の陽射しに映えるシュロの葉は堂々としたもので、ぐんぐんと光合成を行っているような気がして、頼もしかった。いつものように、老母に見せるための写真を撮影した。風は穏やかで、シュロが、私の愚鈍な動きを待ってくれているような気がした。
 その細い道は、急な下り坂になっており、そこを降りると、杉林を切り拓いたアスファルトの広い道に出る。とは言え、そこもまだ見付天神の森の中で、最近は駐車場のために、だいぶ平地を拡げたものだが、それでも周囲には高木が聳え、その下には深い藪が広がっている。
 その広い道を辿り、あらためて三本のクスノキの巨木のある、現代の表参道に出ることになる。この表参道もまた、随分と急な坂道だ。つまり、私は、坂道を下り、坂道を上って、見付天神へと向かうわけである。

広告

シュロ」への2件のフィードバック

  1. こんにちは!

    シュロは、ほうきにもなる素材ですが、葉は手を広げたような光合成には効率の良い形ですね。

    自分の効率の悪さに、なんでも羨ましく見えるものです。

    • yukioさん。ありがとうございます。植物の力は偉大ですね。コメントいただいて嬉しいです。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中