カンタン

Kantan

Kantan

 今年もカンタン(邯鄲)を飼うことになった。
 今年の1月に、急性胆嚢炎で緊急手術をして、胆嚢を切除した老母は、その手術痕の癒着により小腸が狭くなって、今年の9月にまた、腸閉塞を起した。緊急入院して、イレウス管による施術により治癒に至ったが、それでも退院するまでに、一週間はかかった。
 過ぎてみれば、なんという程のこともないように思われるが、それも医師や看護師たちの尽力があってのことで、入院している間は、やはり不安なものである。本人も不安なら、家族も不安だ。私は、老父の朝食を作り、下着の洗濯をする必要があった。そうしながら、老母のいる病院を毎日見舞った。洗濯ものは病人からも出る。病人は退屈であるから、新聞を届ける。病人の調子が良くなれば、話の相手もする。味噌汁に入れるワカメがあるか、油揚げが何処にあるか、というような話もする。四方山話になる。
 秋は、虫の鳴く季節である。老母は、カンタンの音色を好んだ。長く鳴くのが好い、と言う。今年はカンタンを獲らないのか、と私に問うた。
「自然のものだ」と私は答えた。
 老母の入院してる最中、私は夜の草原にカンタンを獲りに行った。鳴いているところを頼りに捕獲するので、雄しか獲れない。それでも6匹ほどを手中に収めることができた。その翌日には、老母に成果を報告した。本人が、一日でも早く、退院する気になってくれるのを、願っての行為である。楽しみがあれば、早く退院しようという気にもなるだろう。患者自身に治ろうという気持がなければ、病気になど克てるものではない。
 カンタンは、集団で飼うと鳴かない昆虫である。手持ちのプラスチック・ケースや、スズムシを入れたネットゲージに分散させて、飼育を開始した。野生動物には、飼育するのに難しいものもある。餌を食べてくれないで、死ぬこともある。花をつけたヨモギを採取してきて、ガラス瓶に腐葉土を入れ、ネットゲージの中に活けた。カンタンはヨモギの花を食う。
 老母が退院してくる頃には、カンタンも環境に慣れたのか、繁く鳴いてくれるようになった。
 今年のカンタンも、長く鳴いている。

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カンタン」への2件のフィードバック

  1. カンタンとは北海道では見ないので初めてです。
    いい鳴声なんでしょうね・・・
    飼育とはその箱の中で環境を作ってあげるノウハウが分からないと出来ないこと。

    たまねさん詳しいだけに、さすがですね。
    餌の採取も大変だしお疲れ様です。

    秋の夜長に鳴く虫の声は心地良いです。

    こちらは雨ばかりで雨音しか聞こえないですよ。

    • yukioさん。コメントありがとうございます。虫の音を楽しむにはライヴがベストです。ぐっすりと眠れて、健康にも良いですよ。コメントいただいて嬉しいです。

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